緒言
活性炭は広い範囲の有害化合物を吸着する力を持っている。そこで、ここでは活性炭の持っている吸着力を高くするためにプラズマ処理を行った。一般に、プラズマ処理は表面化学構造と細孔構造に大きな変化を与える。これらの構造は吸着特性に大きな影響を及ぼす。本研究ではプラズマの発生に誘電体バリヤー放電を利用した。誘電体バリヤー放電は電極間に誘電体を挟んだ交流放電である。通常では、プラズマは高温や低圧の条件下で発生するものであるが、誘電体バリヤー放電は、誘電体により電流が制限されるため常温を保ったまま放電ができるので、高温を嫌う材料・条件で適用でき、大気圧下で処理が行える。そのため、真空装置などの大規模な装置が必要なくなり、低いコストでプラズマ処理が可能となる。この研究では,プラズマ処理に伴う表面性質の変化について知るために、pH、比表面積などの測定を行った。さらに、プラズマで処理された活性炭を用いてヒ素の吸着実験を試み、処理していない活性炭と比較した。
処理方法
本実験で用いた誘電体バリヤ―放電処理装置を、Fig.1に示す。電源部は、商用電源(100V,50Hz)をネオントランスで昇圧したものを用いた。放電部には、電極として2枚の銅版を平行に配置した。処理方法は、活性炭を電極の間に置き、酸素ガスを導入しながら、反応器に電圧を印加し、所定の時間後に放電を止め、活性炭を取り出した。実験は、処理時間10分から30分まで、印加電圧は10.7kVと12.4kV、大気圧下、室温で行った。
結果と考察
吸着現象は活性炭の細孔構造(表面積、細孔容積、細孔径分布)による影響だけでなく、化学的性質(pH)も考慮に入れる必要がある。Fig.2により、プラズマで処理された活性炭ほどpHは低くなる。これは、活性炭表面において酸化反応が起こり、フェノール型ヒドロキシル基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)などが生成するためだと考えられる。一方、活性炭をプラズマで処理しても比表面積はあまり変化しなかった。ヒ素の吸着実験の結果をFig.3に示す。処理された活性炭は、若干の吸着量増加を示している。これは、全細孔容積が増加したためだと考えられる。
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